医学教育研究部

部長     東山 弘子
Director   Hiroko Higashiyama, MD, PhD

関西電力医学研究所

研究部概要

【2024年度 研究テーマと実績】

(1)研究テーマ

糖尿病を持つ人の社会的心理的負担軽減をできるために必要な要件として数年間持続してきた臨床実験の結果を分析評価し、公表すること

(2)実績

① 医療者が糖尿病を持つ人の意識について10数か国で実施された調査(DAWN
study,2012)によると、3分の1の医療者が糖尿病を持つことによる負担を感じ取っていたこと、家族が支援的であると答えた患者の割合は20%であった。日本ではHbAIc検査は高頻度普及しているが、心理的問題に対する配慮は不十分であると報告された。日本の現状についての調査と分析を追試によって実施しているが、今年度中に報告するには至らなかった。
② 医療者と糖尿病を持つ人との関係は、社会構造変化や、組織やコミュニティに関する意識変化に伴い、医療界においても従来の指導的上下関係ではなくて、支援的関係へと変化してきた。教育界、福祉関係、産業界などにおいては、従来のリーダーに変わってファシリテーターと呼ばれるようになった。医療者のファシリテータートレーニングの試験的実験としてカンバセーションマップをツールとして養成してきた数十名の資格者を対象に、ファシリテーターの体験についての質問紙調査を行い、その結果を2024年度の日本糖尿病学会で発表した。(第67回日本糖尿病学会年次学術集会)

【2025年度 研究テーマ】

(1)研究テーマ

医療者の参加者数名と、ファシリテーター1,2名のグループ構成を単位とするカンバセーションマップセッションの実施による、糖尿病の知識や患者の悩みや負担を聴き、共感力をはぐくむ心理療法的介入によってもたらされる効果を分析する。

(2)実績

① 呼びかけに応じて参加した入院患者を対象とする週1回のカンバセーションマップセッションを実施した。2024年度にグループ体験を約50回実施し、延べ人数200名を上回る参加を得た。その結果、医療者に言えない悩みやスティグマなど本音を患者同士で語り合う体験の喜びが患者の負い目やつらさに対する共感や積極的な気持ちを援助するなどの臨床的な効果を得たが、その評価を医学的エヴィデンスとして分析するという課題が現状ではまだ解明されていない。
② 関西電力病院の糖尿病患者のうち、主治医の依頼のあった患者に対する心理療法的介入を行っている約20名の継続面接を行い、心理的介入の効果についての考察を深める。
③ 肥満症の糖尿病を持つ人の心理的介入を依頼されることが増えてきているので、肥満症の心理療法的介入を実施し、背景となっている心理的メカニズムや社会的適応の困難、心理的介入の効果などに対応する。

メンバー

部長 東山 弘子