糖尿病研究センター 糖尿病・内分泌研究部

部長     矢部 大介
Director   Daisuke Yabe, MD, PhD

関西電力医学研究所 副所長
関西電力医学研究所 糖尿病・内分泌研究部 部長
京都大学大学院医学研究科 特定准教授
神戸大学大学院医学研究科 分子代謝医学 客員准教授

研究部概要

糖尿病・内分泌研究部では、糖尿病をはじめとする代謝疾患、内分泌疾患の病態をより良く理解し、新たな予防法や診断法、治療法の確立に資する研究を推進すべく、基礎医学から臨床医学、さらには疫学やメガデータ解析まで幅広い手法を組み合わせて研究を展開しています。

研究テーマ

① 2型糖尿病の病態とインクレチンに関する研究

わが国の糖尿病の大半を占める2型糖尿病は、インスリン分泌不全とインスリン作用障害という2つの障害を特徴とします。
特に日本人を含めアジア人の2型糖尿病は、インスリン分泌不全を主体とし、インスリン抵抗性を主体とする白人の糖尿病と病態を異にします。当研究部ではこのような病態の違いを踏まえ、日本人やアジア人に適した2型糖尿病の予防法や治療法について研究を行っています。 特に、インスリン分泌不全を是正しうるインクレチンと呼ばれる消化管ホルモン(Glucose-dependent Insulinotropic Polypeptide; Glucagon-Like peptide-1)に注目しています。

img_diabetes01

インクレチンの働きにもとづく糖尿病治療薬は、アジア人において奏功する例が多いですが、一部に不応例もあり、投薬前に治療効果を予測する因子の探索が急務であります。当研究部では、日本人におけるインクレチン分泌能を規定する因子を明らかにし、インクレチンの分泌や作用を修飾するとされる薬物の影響を検討することで、 インクレチン関連薬の有効性を予測する因子を研究してきました。
特に魚類を多く摂取する患者においてDPP-4阻害薬が有効であることを見出しました。

img_diabetes02

また、そのメカニズムを解析する過程で、魚や肉をなど、タンパク質や脂質を多く含むものを米飯に先んじて食べることで、インクレチン分泌が促進され、胃運動が抑制されることから食後の血糖上昇が有意に抑制されることも見出しました。本研究成果は、「食べる順番」が糖尿病の予防や治療のための食事療法において、食べる量や内容に加えて重要であることを示した点で高く評価されています。

2016年度研究部紹介画像_矢部先生_063020161

② 糖尿病患者の療養支援に関するツールの開発、検証

糖尿病患者の療養を支援するためには科学的アプローチに加え、心理的なアプローチも重要です。
当科では日本糖尿病協会が普及推進を行ってきた「糖尿病カンバセーション・マップ™」 (http://www.nittokyo.or.jp/event/conv/)や新たなツールを用いた療養指導に関する臨床研究にも着手しています。さらに質問紙を用いた糖尿病患者やその家族、 さらには糖尿病療養支援に従事する医療スタッフの心理分析を通じてより良い支援体制確立を目指します。また就労世代の2泊3日教育入院や糖尿病地域連携パスを用いたかかりつけ医と専門施設の役割分担に関する有効性についても検証事業を行っています。

③ 糖尿病合併症の早期発見、早期介入を可能にする方法論の開発、検証

糖尿病合併症の早期発見、早期介入を可能にする方法論を確立すべく、瞳孔計や振動感覚計、交感神経皮膚反応などを用いた糖尿病神経障害の研究も行っています。さらに、血中や尿中のバイオマーカーを検索することで腎症をはじめとする糖尿病合併症の早期発見に関する共同研究を神戸大学医学研究科分子代謝医学と共に行っています。

平成27年度業績

原著論文(英語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
Iida A, Seino Y, Fukami A, Maekawa R, Yabe D, Shimizu S, Kinoshita K, Takagi Y, Izumoto T, Ogata H, Ishikawa K, Ozaki N, Tsunekawa S, Hamada Y, Oiso Y, Arima H, Hayashi Y. Endogenous GIP ameliorates impairment of insulin secretion in proglucagon-deficient mice under moderate beta cell damage induced by streptozotocin. Diabetologia
in press
Kuwata H, Iwasaki M, Shimizu S, Minami K, Maeda H, Seino S, Nakada K, Nosaka C, Murotani K, Kurose T, Seino Y, Yabe D*. *, corresponding author Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes: A randomized, controlled cross-over, exploratory trial. Diabetologia
59(3):453-461・2016
Sasabe S.A., Fukushima, M, Xin X, Taniguchi A, Nakai Y, Mitsui R, Takahashi Y, Tsuji H, Yabe D, Yasuda K, Kurose, T, Inagaki N, Seino Y. Insulin secretory defect and insulin resistance in isolated impaired fasting glucose and isolated impaired glucose tolerance. J Diabetes Research
1298601, 2016
Usui R, Yabe D*, Kuwata H, Murotani K, Kurose T, Seino Y. *, corresponding author Retrospective analysis of safety and efficacy of liraglutide monotherapy and sulfonylurea-combination therapy in Japanese type 2 diabetes: Association of remaining β-cell function and achievement of HbA1c target one year after initiation. J Diabetes Complications
29(8):1304-9, 2015
Seino Y, Yabe D, Takami A, Niemoeller E, Takagi H. Long-term safety of once-daily lixisenatide in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: GetGoal-Mono-Japa J Diabetes Complications
29(8):1203-10, 2015
Rokutan M, Yabe D*, Komoto I, Kurose T, Kawai J, Nakamura T, Imamura M, Seino Y. *, corresponding author A case of insulinoma with non-alcoholic fatty liver disease: Roles of hyperphagia and hyperinsulinemia in pathogenesis of the disease. Endocrine J
62(11):1025-30, 2015
Seino Y, Ikeda Y, Niemoeller E, Watanabe D, Takagi H, Yabe D, Inagaki N. Efficacy and Safety of Lixisenatide in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Insufficiently Controlled with Basal Insulin±Sulfonylurea: A Subanalysis of the GetGoal-L-Asia Study. Horm Metab Res
47(12):895-900, 2015
Kuramoto N, Yabe D*, Kurose T, Seino Y. *, corresponding author A case of hypoglycemia due to illegitimate sexual enhancement medication. Diabetes Res Clin Pract
108(1): e8–e10, 2015
Yabe D*, Kuroe A, Watanabe K, Iwasaki M, Hamasaki A, Hamamoto Y, Harada N, Yamane S, Lee S, Murotani K, Deacon CF, Holst JJ, Hirano T, Inagaki N, Kurose T, Seino Y. *, corresponding author Early phase glucagon and insulin secretory abnormalities, but not incretin secretion, are similarly responsible for hyperglycemia after ingestion of nutrients. J Diabetes Complications
29:413-421, 2015
Yabe D*, Kuwata H, Kaneko M, Ito C, Nishikino R, Murorani K, Kurose T, Seino Y. *,corresponding author Use of the Japanese health insurance claims database to assess the risk of acute pancreatitis in patients with diabetes: Comparison of DPP-4 inhibitors with other oral anti-diabetic drugs. Diabetes Obes Metab
17(4):430-434, 2015

 

総説(英語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
Yabe D*, Nishikino R, Kaneko M, Iwasaki M, Seino Y. *, corresponding author Short-term pharmacovigilance of sodium/glucose co-transporter 2 inhibitors in Japanese clinical practice: Considerations for their appropriate use to avoid serious adverse events Expert Opin Drug Saf
14(6):795-800, 2015
Yabe D*, Kuwata H, Usui R, Takeshi K, Seino Y. *, corresponding author Glucagon-like peptide-1 receptor agonist therapeutics for total diabetes management: Assessment of composite end-points. Curr Med Res Opin
31(7):1267-70, 2015
Yabe D, Seino Y Type 2 diabetes via β-cell dysfunction in east Asian people Lancet Diabetes Endocrinol
4(1):2-3, 2016
Yabe D*, Seino Y. *, corresponding author Alogliptin for the treatment of type 2 diabetes: a drug safety evaluation Expert Opin Drug Saf
15(2):249-64, 2016
Seino Y, Kuwata H, Yabe D*. *, corresponding author Incretin-Based Drugs for Type 2 Diabetes: Focus on East Asian Perspectives J Diabet Investig
7(Supple 1): 102-110, 2016

 

総説(日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
矢部大介 GLP-1の分泌制御と全身作用 日本臨床増刊号 新時代の臨床糖尿病学
74(suppl 1) 136-143, 2016
矢部大介、桑田仁司、清野裕 4.食後血糖と栄養素摂取の順番 糖尿病
59(1):30~32,2016
矢部大介 食べる順番はどうしたらいいですか ホルモンと臨床
62(3):37-40,2016
桜町惟、矢部大介、清野裕 GLP-1受容体作動薬追加のコツ Medicina
第53巻第1号78-81, 2016
矢部大介、清野裕 糖尿病における栄養管理 BIOS
第20巻第4号3-6, 2015
矢部大介 糖尿病の薬物療法と食事療法のポイント ヘルスケア・レストラン
第23巻第11号16-19, 2015
矢部大介 糖尿病診療を変革するインクレチン関連薬 –実臨床における実績と課題、そして今後の展望‐ Animus
第84巻29-34, 2015
矢部大介 Lecture note 糖尿病治療と心理的サポート DxM
第8巻2-5, 2015
益崎裕章、矢部大介、大西由希子、松澤陽子、松田やよい 肥満症の日常診療:最近のアプローチ・私の工夫~栄養・食事・運動・行動変容・心理・生活リズムの観点から~ 日本内科学会雑誌
104: 748-762, 2015
矢部大介、大杉満、松久宗英、坂口一彦 CGMは糖尿病血糖管理に有用か Diabetes Strategy
5(3): 5-21, 2015
野見山崇、柴田大河、脇裕典、矢部大介、津村和大、平井洋生、工藤宏仁、三好秀明 若手糖尿病専門医による座談会-新しい治療法、未来の糖尿病診療についての夢- さかえ
56(1): 8-13, 2016
矢部大介、清野裕 DPP-4阻害薬 糖尿病最新の治療 2016-2018
111-116(南江堂、2016年2月)
矢部大介、清野裕 学習ツールの活用とチーム医療による糖尿病療養指導 糖尿病2016
135-143(診断と治療社、2016年5月)
矢部大介、清野裕 GLP-1受容体作動薬導入時の高血糖 Advice from expert ≪ビジュアル 糖尿病臨床のすべて≫ 糖尿病治療薬の最前線 改定第2版
189-191 (中山書店、2015年8月)
矢部大介 DPP-4阻害薬により増加するGLP-1、GIPの血糖値に対する作用に関して教えてください 心血管事故を予防するための糖尿病治療戦略
157-161(文光堂、2016年3月)

 

学会(海外)招待講演、シンポジウムのみ記載

会名称 発表テーマ 発表者
日時 場所
12th Asian Congress of Nutrition, Symposium Diet and Medication in the Management of Type 2 Diabetes: Promising Fingsings in an Old Couple Daisuke Yabe
2015年5月14-18日 Yokohama
7th Asian Association for the Study of Diabetes Scientific Meeting, Symposium “Incretin Biology” Incretin-based therapy for type 2 diabetes: Focus on East Asian perspectives and hypoglycemia Daisuke Yabe
2015年11月21-22日 Hong Kong
Incretin 2015 Efficacy and Safety of Incretin-Based Therapies in Asian Clinical Use Daisuke Yabe
2015年7月29-31日 Vancouver

 

学会(国内)招待講演、シンポジウムのみ記載

会名称 発表テーマ 発表者
日時 場所
第50回糖尿病学の進歩 今、GLP-1受容体作動薬をどう使うか 矢部 大介
2016年2月19日-20日 東京
第50回糖尿病学の進歩 インクレチンによる糖尿病治療を振り返る:上市6年で明らかにされたこと、明らかでない課題 矢部 大介
2016年2月19日-20日 東京
第19回日本病態栄養学会 アルビレオ受賞講演 病態栄養学を基軸とした2型糖尿病の病態理解と科学的根拠にもとづく栄養療法確立に向けて 矢部 大介
2016年1月9-10日 横浜
第19回日本病態栄養学会 糖尿病治療の現状と課題、そして展望 矢部 大介
2016年1月9-10日 横浜
第30回日本糖尿病合併症学会 インクレチンによる糖尿病治療をふりかえる:上市6年で明らかにされたこと、明らかでない課題 矢部 大介
2015年11月27-28日 名古屋
第30回日本糖尿病合併症学会 SGLT2阻害薬:副作用の観点から 矢部 大介
2015年11月27-28日 名古屋
関西血管生物研究会 インクレチンによる糖尿病治療:血管合併症克服への期待 矢部 大介
2015年10月31日 大阪
第39回日本血液事業学会総会 糖尿病の治療と合併症に対する新たな展開 矢部 大介
2015年10月4日-6日 大阪
第34回武庫川女子大学薬学講座 多様化する糖尿病薬物治療:安全かつ有効に使用するための方略を考える 矢部 大介
2015年6月20日 西宮
第58回日本糖尿病学会年次学術集会 インクレチン関連薬の臨床における有用性と安全性 ~実臨床とレセプトデータの解析を中心に~ 矢部 大介
2015年5月23-24日 山口
第58回日本糖尿病学会年次学術集会 GLP-1受容体作動薬:今後の課題と可能性 矢部 大介
2015年5月23-24日 山口

 

研究助成金

財団名 研究課題 氏名 助成額
浦上食品・食文化振興財団 日本食における「食べる順序」の研究:健康維持・増進に対する有用性の科学的検討 矢部大介 (研究代表) 300万円
日本糖尿病財団リリーインクレチン基礎研究助成 インクレチンによる膵β細胞老化抑制:包括的メタボロミクス、トランスクリプトミクスによる分子代謝基盤の解明 矢部大介 (研究代表) 100万円
文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B) 栄養素によるインクレチン分泌制御メカニズムの解明 矢部大介 (研究代表) 100万円(H27年分、神戸大学にて交付)
平成27年度 日本医療研究開発機構 研究費(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業) 生活習慣病予防のための宿泊を伴う効果的な保健指導プログラムの開発に関する研究 ~宿泊型新保健指導(スマート・ライフ・ステイ)プログラム~ 矢部大介 (研究分担) 80万円(H27年度分、関西電力病院にて交付)

 

受賞

団体名 表彰名 受賞者
日本病態栄養学会 アルビレオ賞 矢部 大介

メンバー

部長 矢部 大介
副部長 田中 永昭
研究員 山口 拓郎
研究員 清水 忍
研究員 江藤 博昭
研究員 松木 良介
研究員 遠藤 隆之
研究員 坂口 真由香
研究員 藤原 周一
研究員 桜町 惟
研究員 上野 慎士
研究員 岡本 紗希
研究員 平沢 良和
研究員 真壁 昇
研究員 森口 由香
客員研究員