睡眠医学研究部

部長     立花 直子
Director   Naoko Tachiana, MD, PhD

関西電力医学研究所 睡眠医学研究部 部長
関西電力病院 睡眠関連疾患センター センター長

研究部概要

睡眠関連疾患は従来の縦割の講座・標榜科目の中だけでは診断・治療が完結しないという特徴をもつ。米国においては、睡眠医学を担うハード面としての要素として睡眠センターをつくることによって総合的に診療に携わると同時に、他の医学分野と相補しあう形で臨床研究を行い、次世代への教育や一般市民への啓発活動が成されていったが、日本では睡眠医学という専門分野そのものが認知されていない。こういった事情の下、当講座での研究活動としては、従来の狭義の医学研究のみならず、医療従事者や一般市民に対して睡眠に関係する内容のうち、何をどのように伝えていくべきかという方法論を打ち立てることも大きな研究テーマとしている。

研究テーマ

①神経変性疾患の前駆症状としてのレム睡眠行動異常症(RBD)患者と家族への有効なフォローアップ体制の検討

(背景ならびに研究手法)

RBDは睡眠中に夢に支配された行動のために患者本人や家族が怪我をしたり、家族が睡眠を妨げられたりすることを特徴とするパラソムニアの一種であるが、近年、長期にわたってRBDの経過を追うと、パーキンソン病やレビー小体型認知症を高率に発症することがわかってきた。しかし、その発症が近い将来なのかどうかについての予測は困難であり、初期の時点から画一的に発症の危険性を伝えることは、患者と家族の不安を増すことにもつながり、どういった形で対応するかは大きな課題である。RBD患者を長期にフォローアップしていくことによって、どのような精神症状、神経症状、認知機能の問題が出てくるかを経時的にとらえ、RBD診断確定後の外来通院時に生じる諸問題について分類し、有効な対応策を抽出する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)の治療効果を最大化するために

(背景ならびに研究手法)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の最も確実な治療は経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法であるが、対症療法であるため、可能な限り毎日使用する必要がある。実際の使用状況(使用時間、日数、治療圧の変化、呼吸イベント抑制状況など)は、CPAP機器本体に記録され、内臓メモリから読みだすことで確認できるが、そのデータからは十分な睡眠の量と質とが確保できているかどうかは保証されない。CPAPをほぼ毎日使用しているにもかかわらず、昼間の眠気が改善しない、ぐっすり眠った気がしない、CPAPを使用することで眠りにくいと感じるなど、CPAPの治療効果が明らかでないOSAS患者に遭遇することがあり、その原因については、これまで検討されていない。高いアドヒアランスでCPAPを使用する患者に対して、CPAP機器の使用状況データと客観的な睡眠・覚醒状態の指標とを比較検討することにより、治療効果を得るために必要なCPAPの使用方法とそれを支える睡眠習慣のあり方を検討し、個々のOSAS患者に合ったCPAP治療効果を最大化するための睡眠指導のノウハウを確立する。

③高齢者の不眠患者の睡眠・覚醒・活動状態とその認知 -不眠の日薬物療法の開発-

(背景ならびに研究手法)
睡眠薬の慢性服用による弊害が明らかになってきており、不眠の非薬物療法の普及が急務である。不眠の非薬物療法を実施するには、まず患者自身に睡眠の状態を的確に把握させ、その内容を患者と治療者とが共有し、そこを出発点として治療を進めていくことが重要である。簡便な睡眠のモニター方法としてSleep-wake log(SWL)があるが、自記式であるため、実際に眠った部分とは食い違う(自己の睡眠状態の認知が悪い)場合がある。加えて、良い睡眠を取るためには、日中には光を浴びながら活動し、夜には暗くして休むという睡眠、覚醒、活動の状態を24時間のリズムに合わせていくことが重要であるが、現代社会においては、そういった生活習慣を取りにくいのが現状である。さらに不眠を訴える患者において、睡眠状態の認知の歪みや、睡眠に悪い生活習慣を取っているにもかかわらず、それを十分に認識していないことが多く認められる。こういった不眠患者に対して、睡眠や覚醒の認知の問題の有無を調べ、非薬物療法(睡眠教育と認知行動療法)の導入や成功にどのように影響するかを明らかにする。ひいては、そのノウハウを不眠の非薬物療法の開発と普及につなげる。

ナルコレプシー類似の過眠症の病態解明

日中の過度の眠気(EDS)を示す過眠症疾患群のうち、中枢神経系に原因があるものとしてはナルコレプシーが一番良く調べられており、情動脱力発作を示すI型ナルコレプシーについては、オレキシン欠損症として説明され、髄液オレキシン測定により確定診断が可能となりつつある。しかし、情動脱力発作のないⅡ型ナルコレプシーについては、オレキシン値が正常であることが大部分であり、この方法では診断ができず、睡眠潜時反復測定検査(MSLT)を用いて入眠期にレム睡眠の出現を確認することが必要である。加えて、睡眠時間を8-9時間確保してもEDSが改善せず、MSLTを実施してもナルコレプシーと診断できない若年患者群があり、発達障害との関連が指摘されている。I型ナルコレプシー以外の過眠症疾患群について、古典的な睡眠検査以外の諸検査を加えることによって、新たな疾患分類を開発し、病態解明につなげる。

終夜パルスオキシメトリによる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のスクリーニングと治療効果の長期フォロー

(背景並びに研究手法)
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) は、有病率の高い疾患であり、効率的にスクリーニングを実施し、より詳細な検査である終夜睡眠ポリグラフ検査 (PSG) と適切な治療へつなげることが重要である。しかし、わが国の現状を鑑みると全ての患者にPSGを実施するのは現実的ではない。終夜パルスオキシメトリは在宅や病棟で自分で実施できる検査であり、血中の酸素飽和度および脈拍変動を連続的に記録できることからOSAのスクリーニングとして利用が可能である。また、OSA患者が持続陽圧呼吸療法 (CPAP療法) や歯科装具 (oral appliance) で治療を受けたときに、どの程度無呼吸や低呼吸がコントロールできているかを簡便にチェックするときにも活用できる。しかし、非肥満者や若年者においては、酸素飽和度の変動が小さくなり偽陰性となることが知られている。どういった症例において、以上の目的で使用してよいかどうかについてデータを蓄積し、検討している。
 

最近の代表的な論文

著者 論文題目
Tanioka K, Okura M, Inoue M, Taniguchi KI, Taniguchi M, Hamano T, Tachibana N Rate of augmentation and risk factors with long-term follow-up in Japanese patients with restless legs syndrome. Neurol Sci. 39:1559-1564, 2018.
Tachibana N Sleep related movement and behavior disorders. Rinsho Shinkeigaku. 56:541-9, 2016.
Tachibana N History of Japanese Clinical Sleep Medicine. In: Sleep Medicine:A Comprehensive Guide to Its Development, Clinical Milestones, and Advances in Treatment. Chokroverty S,  and Billiard M.  (eds) Springer-Verlag, New York   pp129-132
Tachibana N Living with Restless Legs Syndrome/Willis-Ekbom Disease. Sleep Med Clin. 10:359-67, 2015.

 

学会(海外)招待講演、シンポジウムのみ記載

会名称 発表テーマ 発表者
日時 場所
World Sleep 2017 Alternative way to sleep medicine in Japan Tachibana N, Muraki H
2017.10.11.. Prague, Czech Republic


 

メンバー

部長 立花 直子
副部長  
研究員 紀戸 恵介
研究員 谷口 浩一郎
研究員 藤原 萌子
客員研究員 河合 真
客員研究員 門野 真由子
客員研究員 石井 徹