リハビリテーション医学研究部

部長     惠飛須 俊彦
Director   Toshihiko Ebisu, MD, PhD

関西電力医学研究所 リハビリテーション医学研究部 部長
関西電力病院 リハビリテーション科 部長

研究部概要

リハビリテーション医学研究部では、高齢障害者および脳血管障害者の効果的なリハビリテーションの確立に向けて、運動療法、栄養療法の効果を様々な角度のデータから検証し、研究を行っています。

また、各臓器障害の急性期・回復期に対する効果的なリハビリテーションの確立に向けても、物理療法・運動療法・高次脳機能訓練など様々なリハビリテーションの治療手技の効果を検証して、研究を行っています。

研究テーマ

①脳血管障害者の回復期リハビリテーションにおける脳領域間functional connectivityの変化について

(背景)

MRIは一般には形態的病態診断に使用されるが、1992年blood oxygenation level dependent (BOLD)効果(脳活動に伴う酸素消費量と血流量の変化に基づくデオシキヘモグロビン(deoxy-Hb)の存在比率の変化により信号変化が生じる現象)を利用して機能的MRI (fMRI)により脳機能を画像化できることが報告された。しかしながら当初のfMRIは、刺激や課題を連続的に被検者に提示してその反応を観察するものであったため、高次脳機能障害や認知症をかかえる症例に対しては検査困難であり、また課題自体もMRI装置内で施行できるものでなくてはならず、多くは健康正常人を対象とした神経生理学的研究に留まり、課題に関しても制限されていた。しかし、近年 安静時fMRI (resting state fMRI)すなわち認知課題を遂行せず、安静時に撮像するfMRIを用いて、脳領域間の機能的結合(functional connectivity)の測定が可能であることが報告され、脳は安静時も休止しているのではなく、絶えず自発的な神経活動は行っており、それに基づくBOLD信号の揺らぎが生じ、その揺らぎに着目すると異なる領域間の自発的神経活動の相関関係を機能的結合と呼び、領域間の機能的なコミュニケーションを反映するものと考えられている。安静時fMRIは、認知的あるいは身体的に課題遂行が困難な患者様の脳内ネットワークの検出に有用な手法と思われる。また、MRIでは分子拡散の異方性情報を使って神経繊維追跡を行いtractography (DTI)を作成することも容易に行えるようになってきた。筆者は1991年より分子拡散を用いた脳疾患病態解析の分野での研究、発表を多数行ってきた。一方、日常リハビリテーションの現場では、完全麻痺を有する症例でも、装具装着し、積極的立位・歩行訓練を継続することにより、動作能力の改善を獲得することは稀ならず経験する。また高次脳機能についても、例えば半側空間無視など、リハビリテーションの課程で改善が見られる症例も臨床現場で経験する。すでに損傷を受けた神経細胞の再生は一般的に困難と言われてきたが、ここ数年、脳内ネットワーク再構築に関する報告もなされはじめてきている。しかしながら、まだ報告は少なく、高次脳機能を含めた回復過程における新たな脳内ネットワークの構築の関与の可能性など、リハビリテーションの効果の科学的解明に関する研究はまだ多くは行われていない。

(目的)

脳血管障害患者のリハビリテーションによる機能回復課程において、積極的装具療法による歩行機能を中心とした運動機能の改善と脳内ネットワークの変化との関連を検討する。また、半側空間無視など視空間認知の障害の回復過程にも注目し、認知機能の改善と脳内ネットワークの変化との関連についても検討する。

(対象および方法)

当院回復期リハビリ患者様に対して、回復期病棟入院時および退院前に3テスラMRI装置を用いてfMRIおよびDTIを撮像する。通常の病態把握のために行う一般的な検査に加えて行うため、10分間程度の追加を加えるのみで終了する。後日、fMRI解析は起点相関法 (seed-based correlation method)ないしは独立成分分析(independent component analysis)で施行し、DTI解析ではtractography作成を行って検討する。解析は明治国際医療大学(京都)および自然科学研究機構生理学研究所(岡崎)准教授 福永PhDとの共同研究として行う。

②回復期リハビリテーション病棟における運動・栄養療法が筋量および日常生活動作能力に及ぼす影響

1.高齢大腿骨頸部骨折患者

大腿骨頚部骨折は高齢者の筋力・筋量・骨密度低下が原因で起こり、骨折治療による手術侵襲・安静・低栄養で筋力・筋量低下がより一層増強されるため、骨折術後のリハビリテーションでは、筋量増加目的の運動・栄養療法が必要である。効率的な術後リハビリの為に運動量と栄養量の設定が必要となるが、その基礎データとなる高齢大腿骨頸部骨折患者の安静時代謝量・運動療法時の1日必要エネルギー量は不明であり、積極的な運動療法と栄養療法時の安静時代謝・筋量・運動機能の推移を測定した研究が全くない状況であり、明らかにしていく必要がある。

この研究では、安静時代謝量を測定した上で、1日必要エネルギー量を算出し、運動療法に階段昇降などを付加することによって、筋肉量・栄養状態・歩行能力などがどの様に推移するかを検証する。

2.脳血管障害片麻痺者

脳血管障害後の身体活動量低下は,再発を含めた新たな血管イベント発症を増大させると報告されている。しかし、脳血管障害後の10%は完全回復するものの,25%が軽度ADL低下,40%が中等度から重度ADL低下,10%が介護施設入所,15%が死亡とされており,脳血管障害後、ほとんどの患者の身体活動量が低下していると考えられる。このため、脳血管障害後に積極的な運動療法を行い身体機能の改善を図る必要がある。しかし、歩行を含めたADL改善は,発症後12.5週以内にそのほとんどがピークに到達すると報告されているものの、機能回復期に筋力や歩行能力が改善するのに適切な運動方法や運動量・栄養量については、明らかになっていない。この研究では、脳血管障害後早期に階段昇降を運動療法に付加することによって,骨格筋量の増加に関与し,歩行機能,ADL機能の改善に結びつくと考え、定期的に筋力・歩行能力・日常生活動作能力を測定し、その効果を検証している。

2018年度業績

原著論文(英語/日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
Hirasawa Y, Matsuki R, Ebisu T, Kurose T, Hamamoto Y, Seino Y Evaluation of skeletal muscle mass indices, assessed by bioelectrical impedance, as indicators of insulin resistance in patients with type 2 diabetes J Phys Ther Sci
31: 190-194, 2019
久堀佐知、飯塚照史、児島範明、惠飛須俊彦 脳血管疾患患者における回復期リハビリテーション病棟退院後の日常生活動作能力の変化及び関連因子に関するアンケート調査 作業療法
38: 37-44, 2019
荒木正人、山本洋司、児島範明、惠飛須俊彦、宮原永治 急性期脳卒中患者の転帰時FIM排泄項目に影響する因子 第一報
ー早期離床と転帰時FIM排泄動作項目および排泄管理項目との関連ー
大阪作業療法ジャーナル
32: 129-134, 2019
平沢良和 松木良介 惠飛須俊彦 黒瀬健 女性2型糖尿病患者の上下肢・体幹筋量とインスリン抵抗性の関連 理学療法科学
33: 519-522, 2018

 

総説(日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
松木良介 早期リハビリテーションのアウトカム 早期リハビリテーションの実践 予後改善のためのアプローチ
pp 19-24, 2018
松木良介、大浦啓輔 急性心筋梗塞後の理学療法 エキスパート理学療法3
PDC理論で学ぶ内部障害理学療法-心血管疾患・内分泌代謝疾患・腎疾患編-
PP 22-37, 2019
pp 22-27, 2019
大浦啓輔 理学療法における全身管理の指標の理解 理学療法における呼吸の理解のポイント 理学療法
35: 516-525, 2018
大浦啓輔 回復前期のリハビリテーション 学び、身につけ、実践!心臓血管外科リハビリテーション-ゴールドスタンダード
pp 134-148, 2018

 

学会(国内)招待講演、シンポジウムのみ記載

会名称 発表テーマ 発表者
日時 場所
第44回日本脳卒中学会学術集会
シンポジウム 3
脳機能・病態から見た脳卒中画像診断の最前線 安静時fMRIを用いた脳卒中回復期の半側空間無視に関する評価 惠飛須 俊彦
2019年3月21日  横浜
第46回日本集中治療医学会学術集会
パネルディスカッション
PICS対策とPost Intensive Care に向けた改善策 PICS対策:重症疾患後の認知機能障害に対する対策と展望 児島範明
2019年3月2日 京都
日本集中治療医学会第2回関西支部学術集会パネルディスカッション ICUの常識・病棟の非常識
〜施設全体の重症管理力を上げるために〜
入院から退院まで重症リハビリテーションの連続性~ICU専任セラピスト体制とICU退室後の日常生活動作能力の推移~ 松木良介
2018年7月7日 大津
高次脳機能障害学会2018年夏期教育研修講座Aコース 3.伝導失語と健忘失語 失語症候とその対応 宮崎泰広
2018年8月1日 横浜
広島大学  理学療法講習会 心臓リハビリテーションに必要な医学知識 大浦啓輔
2018年8月4日 広島
兵庫医療大学 CPN講習会 X線、CTの診方 大浦啓輔
2018年12月16日 神戸

 

受賞

団体名 表彰名 受賞者
大阪府理学療法士会 平成28年度大阪府理学療法士会学術奨励賞 山本洋司
日本糖尿病学会 第61回日本糖尿病学会医療スタッフ優秀演題賞 松木良介
日本集中治療医学会 日本集中治療医学会第1回関西支部学術集会最優秀演題賞 児島範明

メンバー

部長 惠飛須 俊彦
研究員 垣田 真里
研究員 平野 博久
上級特別研究員 宮崎 泰広
特別研究員 尾崎 新平
特別研究員 山本 洋司
特別研究員 松本 恵実
特別研究員 堀田 旭
特別研究員 大浦 啓輔
特別研究員 松木 良介
研究員 児島 範明
研究員 平澤 良和