消化器・肝臓病研究部

部長     染田 仁
Director   Hitoshi Someda, MD, PhD

関西電力医学研究所 消化器・肝臓病研究部 部長
関西電力病院 消化器センター長

研究テーマ

①肝超音波検査で描出不能の肝細胞癌(HCC)に対するReal-time Virtual Sonography(RVS)を用いたラジオ波熱凝固療法(RFA)の検討

肝EOB-MRIの普及により10mm前後の小さなHCCの指摘が可能になったが、同病変が超音波検査(US)で描出できない場合がある。小HCCの治療に有用なRFAは通常超音波ガイド下で施行されるため、USで描出できない小HCCの治療に難渋する。
この問題を解決するため、RVSを用いたRFAの有用性を前向きに検討する。USで描出困難なHCCを,EOB-MRIの画像データを取り込んだRVSを用いて,描出可能なHCCと同様な治療効果が得られるのかを前向きに検討する。

  • ・Bモードにて描出されない腫瘍と描出される腫瘍の治療完了と評価されるまでに要するRFAの治療回数(セッション数)を比較。
  • ・RVS下のRFAにおいて、セッション数に与える因子を多変量解析により明らかにする。因子の候補はサイズ、病変の深さ、肝の部位、再発形式、穿刺体位、超音波造影剤の使用の有無、RVSの画像データの種類、Fusionの方法、等を用いる。

②胆道狭窄症の診断における新デバイスの有用性に関するランダム化比較試験-多施設共同研究-(京都大学消化器内科とその関連病院との共同研究)

近年、画像診断技術の進歩に伴い胆管癌の存在診断は飛躍的に向上したが、病理診断に基づく確定診断は未だ満足のいくものではない。その原因として十分量の組織採取や正確な病変の狙撃生検が困難であることが考えられる。
我々は以前より京都大学胆膵グループとの共同研究により胆管組織診断に関する新しい処置具の開発、検証に携わってきた。今回京都大学胆膵グループにて、胆管癌の病理組織学的診断および水平方向への進展度評価を含めた胆管癌診断における新しい診断デバイス(EndoSheather®、製造販売届出番号09B1X00004000166、以下「新デバイス」と呼ぶ。)を開発した。この新デバイスを用いる(「新法」)ことで以下のような成果を得ることが期待できる。

①これまで選択が困難であった胆管狭窄部までデバイスを正確に誘導することが可能となる。
②主病巣に直接接触することなく末梢側へ生検鉗子を誘導することができるため、偽陽性を防ぎ、正確な水平方向への進展度評価が可能となる。
③生検鉗子の十二指腸乳頭への直接かつ頻回の接触がなく、膵炎等の偶発症予防が期待できる。
④迅速に正確な病変部の狙撃生検が可能となるため検査時間の短縮が期待できる。

多数の市中病院における胆管生検の成績に与えるインパクトをリアルワールドで解析を行うため、多施設共同前向きランダム化比較試験を計画し、新規デバイスデリバリーシステムを用いた透視下の胆管生検手技「新法」の有用性を検証する。

  • ・主要評価項目の解析:全症例における、割り付けされたデバイスを使用し、生検(組織採取)1回あたり5分以内の狭窄部生検を3回成功した割合を集計し、生検成功率を算出する。
  • ・副次的評価項目の解析:生検所要時間、総処置時間、割り付けデバイスでの生検手技成功率、割り付けデバイス群でクロスオーバー後の成功率、適正検体採取率、偶発症、生検組織による悪性としての感度・特異度・正診率。

③85歳以上の超高齢者早期胃癌に対する胃ESDの安全性と妥当性に関する他施設共同後ろ向き観察研究(京都大学消化器内科とその関連病院との共同研究)

『早期胃癌に対する胃内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は低侵襲な治療として普及している。胃ESDの患者層は高齢化が進んでいるため、併存疾患やADL等の問題を有し、単に医学的見地からのみ早期胃癌に対するESDの治療適応を決定する事が出来ない。
超高齢者の早期胃癌に対する胃ESDに関する臨床的・病理学的な診療情報を収集し、治療合併症に寄与する因子と治療予後に寄与する因子について明らかにし、超高齢者のおける胃ESDの適応を決定する根拠を得たい。

  • ・主要評価項目:全生存率に関連する因子の検討
    服地評価項目:全併発症発生率・一括切除率・再発率・外科的追加切除率・3年生損率・5年生存率、また各々に関連する因子の検討、ESD後1年間の医療費など。
  • ・主な解析方法:群間比較において、質的変数はFisherの正確検定、連続変数はStudent t検定もしくはWilcoxonの順位和検定などを用いる。併発症、一括切除、再発に関連する因子の検討については多変量ロジスティク回帰分析、全生存率に関連する因子についてCox比例ハザードモデルで検討する。

最近の代表的な論文

著者 論文題目
Kato Y, Azuma K, Someda H, Shiokawa M, Chiba T Case of IgG4-associated sclerosing cholangitis with normal serum IgG4 concentration, diagnosed by
anti-laminin 511-E8 antibody: a novel autoantibody in patients with autoimmune pancreatitis. Gut
2020;69:607-610

2023年度業績

原著論文(英語/日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
Hiroyuki Yoshida, Masahiro Shiokawa, Takeshi Kuwada et al. Anti-integrin αvβ6 autoantibodies in patients with primary sclerosing cholangitis J Gastroenterol.
2023; 58(8): 778–789.

メンバー

部長 染田 仁
研究員 藤原 幹夫
研究員 東 恵史朗
研究員 吉田 裕幸
研究員 濱田 健輔