睡眠医学研究部

部長     立花 直子
Director   Naoko Tachiana, MD, PhD

関西電力医学研究所 睡眠医学研究部 部長
関西電力病院 睡眠関連疾患センター センター長

研究部概要

睡眠関連疾患は従来の縦割の講座・標榜科目の中だけでは診断・治療が完結しないという特徴をもつ。米国においては、睡眠医学を担うハード面としての要素として睡眠センターをつくることによって総合的に診療に携わると同時に、他の医学分野と相補しあう形で臨床研究を行い、次世代への教育や一般市民への啓発活動が成されていったが、日本では睡眠医学という専門分野そのものが認知されていない。こういった事情の下、当研究部での研究活動としては、従来の狭義の医学研究のみならず、医療従事者や一般市民に対して睡眠に関係する内容のうち、何をどのように伝えていくべきかという方法論を打ち立てることも大きな研究テーマとしている。なお、当研究部は、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻における連携大学院となっており、大学院生の受け入れが可能である。

https://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/jpn/departments/renkei.html#80

研究テーマ

①閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)のアドヒアランス向上を目指して

(背景ならびに研究手法)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の最も確実な治療は経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法であるが、対症療法であるため、可能な限り毎日使用する必要がある。将来的な血管イベントを予防するためには、毎夜4時間以上、70%以上の日数の使用が必要とされているが、長期に渡ってこのアドヒアランスを保てている患者は世界的にも少ないことがわかっている。一方、関西電力病院では、常時350人のCPAP通院患者の診療を行っているが、8割以上の患者がこのアドヒアランスを達成している。しかし、その中には、日によっては使用時間が短くなったり、交替勤務のために昼間に使用する日が混じったり、使用の実態はさまざまである。また、治療目標も1)良い睡眠を得て眠気を軽減させ、QOLの向上や労働効率を上げる、2)循環器疾患の発症や悪化の予防、3)脳卒中の再発の予防、4)軽度認知障害の悪化の予防など多岐に渡る。患者の属性やOSASの重症度、治療目標とCPAPの使用実態を比較検討することにより、まず、アドヒアランスを上げる決定因子を検索し、さらに患者の満足度を上げるための睡眠指導のノウハウを確立する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)の適正圧タイトレーションを午睡で行う試み

(背景ならびに研究手法)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対して、経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法を導入するに当たって、CPAPの空気圧が適正であるかどうかが非常に重要である。最近のCPAP機器には、患者の睡眠時の呼吸に合わせて上気道の安定した開存を達成するための圧を自動的に調整する機構が備わっているとはいえ、上限圧と下限圧を適切な空気圧で設定しておかないと、患者にとって不快な圧であったり、十分な開存が達成できない圧であったりすることはよく知られている。したがって、適正な圧を決める作業(タイトレーションと呼ばれている)は、一晩の常時監視終夜睡眠ポリグラフ検査を行いながら、CPAPを装着させ、呼吸イベント(無呼吸や低呼吸、呼吸努力によっておこる一過性覚醒、いびき)をなくすのに必要な空気圧を決める方法(スタンダードタイトレーション)が日本以外の諸外国ではゴールドスタンダートとされている。

しかし、このスタンダードタイトレーションが浸透していないのが、日本の現状であり、技術面を維持しつつ、患者及び医療者の負担を少なくする手法の開発が早急の課題である。これまで関西電力病院睡眠関連疾患センターで継続的に午睡を利用したタイトレーションを行ってきたが、この手法が従来の手法と同等に適切圧を決定し得るか、またどのようなCPAPアドヒアランス結果をもたらすか明らかにする。

ナルコレプシーの早期診断のために解決すべき医療的課題の探索

(背景ならびに研究手法)
ナルコレプシーは、治療によって生活の質が改善する疾患であるにも関わらず、症状の発現から診断確定まで長期間を要することが多い。その原因として、一般市民のみならず、医療者においても疾患に対する適切な理解が乏しいことが示唆されているが、実態はよくわかっていない。我々は、関西電力病院睡眠関連疾患センターにてナルコレプシーとすでに確定診断された患者において、インタビューシートや過去の診療録・紹介状を解析し、症状出現後の患者の受療行動、紹介元での診断ならびに検査、当センターに紹介された動機、などを検討している。その上で、一般医が簡便に使用できるチェックシートの作成を進め、さらに、そのチェックシートの感度・特異度を当院初診患者にて検討する予定としている。最終的には、一般医が適切にナルコレプシーを疑い、紹介する際に参考になるマニュアルを作製するとともに、一般市民に対しても、ナルコレプシーを早期に疑うポイントとナルコレプシー検査・診断・治療の概略を関西電力病院のホームページに掲載し、広く啓発活動を行うことを目標としている。

最近の代表的な論文

著者 論文題目
Kido K and Tachibana N The new procedure for manual CPAP titration: the afternoon CPAP titration (aPT). J Med Invest 68: 170-174, 2021.
Provini F and Tachibana N Acute REM sleep behavior disorder. In: Schenck C, Hogl B, Videnovic A eds. Rapid-Eye-Movement Sleep Behavior Disorder, Springer, pp153-172, 2019.
Tachibana N Sleep related movement and behavior disorders. Rinsho Shinkeigaku. 56:541-9, 2016.

 

2020年度業績

原著論文(英語/日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
Tsukita K, Tachibana N, Hamano T Appropriate assessment method of 123I-MIBG myocardial scintigraphy for the diagnosis of Lewy body diseases and idiopathic REM sleep behavior disorder Jounral of Neurology
267:3248-3275, 2020
Tanioka K, Castelnovo A, Tachibana N, Miano S, Zecca C, Gobbi C, Manconi M Framing multiple sclerosis under a polysomnographic perspective Sleep.
43(3). pii: zsz232. doi: 10.1093/sleep/zsz232, 2020

 

総説(日本語)

著者 タイトル 掲載誌名
掲載号等・掲載年
立花直子 終夜睡眠ポリグラフ検査の進歩 その光と影 臨床神経生理学
48:24-31, 2020.
小栗卓也 立花直子 レム睡眠行動異常症 臨床神経生理学
48:50-58, 2020.
立花直子 小児睡眠医療のための医学教育 小児科診療
83: 47-51, 2020
立花直子 睡眠時無呼吸症候群の診断と検査 日本医師会雑誌
149: 261-265, 2020.
立花直子 睡眠から健康を見直そう 大同生命厚生事業団 「環境と健康シリーズ」
No74, 2020.

 

メンバー

部長 立花 直子
特別研究員 三原 丈直
特別研究員 紀戸 恵介
研究員 月田 和人
客員研究員 清水 春香
客員研究員 茶谷 裕
客員研究員 和田 晋一
客員研究員 出口 幸奈