2022.10.21
2022年10月19日
ダイエットの成否を決定する脳内神経機構を解明
摂食中枢神経シナプスの不可逆変化による食欲・体重リバウンド
【本研究のポイント】
・食事制限により誘導される、摂食中枢“ニューロペプチドY(NPY)→Y1受容体→オキシトシン(OXT)神経シナプス電流抑制”経路による摂食量と体重の増加の機構を明らかにした。
・食事制限の後、自由摂食で長期観察すると、50%食事制限は持続的な体重減少を誘導した。一方、100%食事制限は晩発性の摂食量増加と体重のリバウンド増加を起こした。
・50%および100%食事制限後1日目のシナプス電流抑制と摂食量増加の全データの解析から、シナプス電流抑制と摂食量増加の関係は飽和曲線を取り、不可逆的変化(ヒステリシス1))の特性を示した。
・適切な強度の食事制限により、シナプス変化がヒステリシスを起こさないことが、体重リバウンドを起こさずにダイエットを成功させる鍵である。
【研究概要】
岐阜大学医学系研究科客員教授・関西電力医学研究所統合生理学研究センター長の矢田俊彦らのグループは、自治医科大学所属時(2018年3月まで)から継続した研究において、食事制限(ダイエット)後に体重リバウンドを起こすかどうかを決定する脳視床下部の神経機構を発見しました(図1)。
本研究では、食事制限したマウスから取り出した脳スライスで神経細胞活動を測定する実験で、24時間の100%食事制限は、視床下部ニューロペプチドY(NPY)のY1受容体を介した作用により、室傍核2)OXT神経への興奮性入力(興奮性シナプス後電流(EPSC)3))が抑制されました(図1)。24時間の食事制限の後、自由摂食条件にすると、このシナプス電流の抑制および1日摂食量の増加が3日間継続し(図1, 図2a)、続いて、晩発性(自由摂食後7日以降)の摂食量と体重の増加(リバウンド)を起こしました(図2a,b)。一方、24時間の50%食事制限の後2日間は同様の効果を示したが程度は小さく(図1)、その後は持続的な摂食量と体重の減少を示しました(図2ab)。
100%と50%の食事制限後1日目のデータをまとめて解析すると、EPSC抑制-摂食量増加の間の関係は飽和曲線を取り、不可逆的な変化(ヒステリシス)が示され、これがリバウンドの原因と考えられます(図3)。ヒステリシスを起こさない適切な強度の食事制限を用いることが、リバウンドを起こさないダイエットの鍵であることを見出しました。
本研究で、ダイエット後に摂食量増加をもたらす脳神経シナプス機構を解明し、さらに、強すぎるダイエットはOXT神経シナプスを不可逆的に変化させ、摂食・体重リバウンドを起こすことを明らかにしました。
食事制限(ダイエット)の強度を適正域に設定し、シナプス変化を可逆的に作動させることにより、体重リバウンドを起こさないダイエットの成功につながり、肥満症の予防・治療のための優れた食事療法への応用が期待されます。
本研究成果は、日本時間2022年10月19日(水)15時にFrontiers in Nutrition誌のオンライン版で発表されました。
▶プレスリリースはこちら → ダイエットの成否を決定する脳内神経機構を解明
【問い合わせ先】
岐阜大学 医学系研究科 客員教授
関西電力医学研究所 統合生理学研究センター センター長
矢田俊彦
電話:058-230-6372
E-mail:toshihiko.yada@kepmri.org
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