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2025.04.11

【NEW】果糖(フルクトース)が膵β細胞からのインスリン分泌に及ぼす影響を細胞実験により解明

【研究概要】

藤田医科大学 内分泌・代謝・糖尿病内科学(講座教授 鈴木 敦詞)/関西電力医学研究所は、膵β細胞からのインスリン分泌に果糖(フルクトース)がどのような影響をおよぼすかをマウスの細胞を用いた実験により明らかにしました。

 

一般的に、食事から摂取したブドウ糖(グルコース)が膵β細胞からのインスリンの分泌を促すことはよく知られています。その一方で、果物や甘味料に多く含まれる果糖がブドウ糖と同時に膵β細胞に作用するとインスリン分泌にどのような影響があるのかは、まだ十分に解明されていませんでした。本研究では、果糖がブドウ糖によるインスリン分泌を高める一方で、意外にも果糖の代謝物がブドウ糖からのエネルギー産生を抑制していることを明らかにしました。

 

本研究は村尾 直哉 上級特別研究員を中心に行われ、論文は2025年3月28日にThe FASEB Journal誌のオンライン版で公開されました。

<論文へのリンク>☜

 

【本研究のポイント】

  1. 果糖をブドウ糖と同時に膵β細胞に作用させると、果糖は膵β細胞の表面にある「甘味受容体」を刺激し、その信号がブドウ糖によるインスリン分泌を増強させることが分かりました。

 

  1. 一方で、果糖が膵β細胞内で代謝されてできるフルクトース1-リン酸(F1P)という物質が、細胞のエネルギーであるATPの産生に必要な酵素PKM2の働きを抑制し、細胞のエネルギー量の指標であるATP/ADP比が低下していました。TEPP-46という化合物でPKM2の働きを助けると、ATP/ADP比が回復し、果糖によるインスリン分泌の増強効果がさらに高まることが分かりました。

 

  1. この研究は、果糖がインスリン分泌に及ぼす役割には二面性があること、そしてPKM2がそのバランスを調節する重要な役割を担っていることを示唆しています。

 

  1. ただし、これらの実験で使われた果糖の濃度は現実の血中濃度よりも大幅に高いため、本研究で明らかになった現象が私たちの体内でも起きているとは限らない点に注意が必要です。

 

【本研究への支援】

本研究は、

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)

JADEC 公益社団法人 日本糖尿病協会

公益財団法人 日本糖尿病財団

公益財団法人 鈴木万平糖尿病財団

公益財団法人 大和証券財団

公益財団法人 鈴木謙三記念医科学応用研究財団

公益財団法人 堀科学芸術振興財団

藤田医科大学

より研究費の助成を受けました。

 

【研究者プロフィール】

責任著者・筆頭著者

村尾 直哉 (むらお なおや)

藤田医科大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科学 助教

関西電力医学研究所 糖尿病研究センター 上級特別研究員

 

【連絡先】

藤田医科大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科学

村尾 直哉

E-mail: muraonaoy@gmail.com

 

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